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小学校はもっと多様になれる――オルタナティブスクール『箕面こどもの森学園』藤田校長に聞く(1)

2014年9月12日

大阪府箕面(みのお)市の住宅街に建つ『箕面こどもの森学園』。ここは、世界中のフリースクールから学んで2004年に誕生した、NPO法人立の小学校です。

学校教育法に属さない非正規の学校、いわゆる「オルタナティブ・スクール」というカテゴリに該当するこの学校では、子どもたちが自分で時間割を決め、自分のペースで考え、調べ、体験して学んでいます。生徒数は現在低学年・高学年の2クラス編成で20名。学習指導要領などに捉われることなく、フランスの教育者・フレネの考えと方法を取り入れた、子どもの主体性・自律性を促進する教育を行っています。

小さいけれど子ども一人ひとりの学びを大切にしたその学び方は、『窓ぎわのトットちゃん』をご存じの方なら、イメージがわきやすいかもしれません。

minoo03.jpg校舎の延べ面積は434㎡。教室は十分な広さが3室あり、
その他に集会室、多目的室、事務室、調理室なども。
からだづくり(体育)や昼休みは近くの公園へ、
プールは近くにある千里北公園の市民プールを利用。
庭には生徒たちが大好きな小屋(秘密基地)もある。


学校教育の画一化、硬直化が問題視される一方で、いま「学校」のカタチは少しずつ多様になってきています。

先の9月10日(水)にも、安倍首相が東京のフリースクールを視察したことが話題になったばかり。たとえ非正規の学校であっても、運営費の補助などの公的支援を検討する、という政府の見解が明言されました

そこで今回から2週にわたり、『箕面こどもの森学園』(以下、こどもの森)の藤田美保校長へインタビュー。公立でも私立でもないNPO法人立のオルタナティブ・スクールという、まだあまり知られていない新しい教育のカタチに、じっくりスポットを当ててみたいと思います。

minoo01.jpg藤田美保校長。2004年の学校設立時から
スタッフとして立ち上げに関わる。
自身が公立小学校で教えていたときの違和感から
「新しい学校を作りたい!」と志すように。


■得意なことを存分にやると、苦手なことにも取り組むようになる

――こどもの森では入学してから卒業するまで、生徒が自分で自分の時間割を決めるそうですね。子どもの自主性にまかせてしまうと、やりたいことばかりやって、必要な勉強がおろそかになって学力が低下してしまうのではないでしょうか?

藤田「ほぼ全員の方が、同じ質問をされます(笑)。私たちが考える学力とは『自ら学ぶ力』。この学園では、将来必要だからといって、学ぶ内容を強制したりはしません。強制するとかえって子どもを学びから遠ざけることになる。苦手意識を持たせないことが大切なんですね。

普通の学校のように時間割に従って進めると、今やっていることをもっとやりたい!と思った子がいても、時間が来ればやめなければなりませんよね。一斉授業形式は、子ども一人ひとりの興味関心や学習ペースに合わせて授業が進んでいくわけではないので、どうしても苦痛に感じる子や学習についていけなくなるが出てくるんですよ。

このような教育の中で長年過ごすと、やがて『何をやりたいの?』と聞いても『わからん』『べつに』『先生、つぎ何やるの?』という受け身の答えしか出なくなってしまいます。でも、子どもは得意なことを充分やると、不思議なもので、いままでやらなかったことにも取り組むようになります。大切なのは、学ぶ意欲を刺激する学習環境を整えることなんですよ」

――具体的にはどのようにされているのですか?

藤田「子どもたちは月ごと、さらに週ごとに自分の学習計画を立てます。自分がどこまでできるか、何をしたいか、いま自分に何が必要なのか考えて『今月のかずは比例と多角形のプリントをやる』とか『今週は科学を選択せずに自分のプロジェクトを進める』とか『この時間には猫のぬいぐるみを作るけど、疲れてきたらビーズの作品を作って気分転換』と、思い思いに計画していくんです。

例えば、鉄道が大好きで、時刻表を愛読している男の子が『漢字ってめんどくさいなぁ~』といいながら書き取りをしていました。でも彼に、『駅の名前って漢字でできてるやん? 駅で漢字の書き取りをしてもいいんやで』というと、一気に目を輝かせて、時刻表とにらめっこしながら漢字の書き取りノートを埋めてしまいました。難しい漢字には自分の判断でふりがなもふって...。つまり、彼は、自分にとって最適な学習法を見つけたわけです」

minoo02.gifこどもの森の時間割。
基礎学習にはことば(国語)とかず(算数)があり、
一人ひとりの学習計画にもとづいて授業が進む。
同じ時間に全員が同じ内容のことをしなくていい、
同じ時間割で動く必要なんてない――。
人と違った学び方でもいいのだと認めることが
こどもの森の学びのプログラムだ。

■どこででも生きられる力を身に付ける

――オルタナティブ・スクールは学校教育法で認められた学校ではないので卒業資格は与えられないのですよね。

藤田「生徒たちは地元の公立小学校に在籍しながら、こどもの森に通っています。そして各学期の終わりに、この学校での出席日数や授業で学んだことなどを在籍校に通知しています。2004年に設立して以来、在籍校の卒業資格が認められなかったことはありません」

――中学や高校に入ったとき、他の子と学力に差がついてしまっているという問題はありませんか?

藤田「高学年(4年生~6年生)の子どもには、1年間の学習目標を立てるときにかずに関しては、小学校6年間で学んでおいた方がよい各教科の学習内容の一覧表を提示します。それによって、いまの自分の学びの状況を把握するんです。

達成されていないことを今後どうするかは、その子どもの責任に任されます。多くの子どもは、未達成の科目を自分の計画に取り入れようとします」

――それで大丈夫なんでしょうか?

藤田「ええ、大丈夫です(笑顔)。この学校に長く居る子は、自ら学ぶ態度や、自分にとって最適な学習方法、協同性、コミュニケーション力......、つまり、生きる力が身についているので、一般の学校へ入っても特に問題はないんですよ」

――例えばある日急に東大に行きたくなったとしても、この学校の子は自分に合う学習方法を"見つける術"を知っているので、充分に受験戦争を戦える、というわけでしょうか。

藤田「極端な例ですけれど(笑)、そういう目標を持った場合、結果はさておき、努力することはできると思います。」

――就職戦線もそうなのでしょうね。いま時代は厳しいですが。

藤田「こどもの森では社会や地域、自然とともに学ぶ時間がたくさんあります。働くってどういうことだろう、社会ってなんだろう...ということを小学1年生から体験的に学び、みんなで意見を出し合いながら、じっくりと哲学していきますから、自分らしい人生を切り開いていますね」


■学校に期待しないなんて、もったいない!

――なんだかお話しをお聞きしていると、保育園や幼稚園の学びに似ているような感じがします。

藤田「あ、まさにそうなんです。保育園や幼稚園まではどこに通わせるのかを考えて園を選びますが、小学校になると選ぶことはなくなり、地域の公立学校に通います。ですが、その結果、保育園や幼稚園までははつらつとしていた子が、小学校で授業を受け始めると、だんだん元気を失くしてつまらなそうにしているという話をときどき聞きます。」

――保育園・幼稚園までは遊びの延長だけど、小学校は先生に従って学ぶ、という概念が親の方にも強くあります。

藤田「公立学校の場合、一人の教員が複数の子どもたちを、決められた教科書に従って指導していくには、どうしても画一的・一方的にならざるを得ません。

それもある意味当然で、学校の教員は忙しすぎます。授業の用意だけでなく、子どもたちの生活面の面倒から親へのフォロー、事務雑務まで一手に引き受けるのですから、子ども一人ひとりの個性を尊重して個別に指導するのはなかなか難しいでしょう」

――学校がつまらないのは、教えるシステムの問題でもあるのですね。

藤田「親ごさんのほうも、幼稚園や保育園に居たときは先生やママ友と密に連携を取りあって、預けている間であっても子どもの様子を把握できていたのに、小学校に入ると見えにくくなって、子どもの様子がわからなくなるという方が多いようです」

――でも学校ってそういうところだから、と、親も手を離さざるを得ないですよね。

藤田「だから、学校にあれこれと期待をしない保護者の方も増えてきていますね。学校には給食だけ食べに行ってくれればいいわ!とか、勉強は塾でフォローするからいいの!とか...。でもね、それってすごくもったいないと思うんですよ」

――もったいない?

藤田「ええ、もったいない! 学校は子どもが1日の大半を過ごす場所です。それなのに、学校ってこんなもんだ、どうせつまらないのだからと割り切ってしまうのは、すごくもったいないと思うんです。学校に居る時間でその子にぴったりの学びができれば、その子はもっともっと伸びることができるのに...」

学校と家庭は子どもを育てる両輪のようなもの。学校の方針と家庭の方針が一致すると、子どもはぐんと伸びる!と、藤田校長は言います。

こどもの森では、生徒だけでなく親たちも、それぞれのスタンスで自主的に学校運営に関わっています。2015年4月、来年度からスタートする中学部も、実は保護者からの発案。「中学部を作ってほしい」と要望を出すだけでなく、保護者たち自身が主体となって中学部設立のためのプロジェクトを立ち上げ、わずか1年で開設に向かうことになりました。

次週は、この中学部開設にいたる経緯を藤田校長にインタビュー。親と学校が一体となって子育て=「共育」をしている様子を、じっくりとお届けします。

(飯田陽子)

【取材協力】
箕面こどもの森学園
http://kodomono-mori.com/

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2013年10月発売/1,728円

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