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親も学校づくりに関わろう!――オルタナティブ・スクール『箕面こどもの森学園』藤田校長に聞く(2)

2014年9月19日

先週から2回にわたってお届けしている、NPO法人立のオルタナティブ・スクール『箕面こどもの森学園』(以下、こどもの森)藤田校長のインタビュー。

今週は、2015年度からスタートする「こどもの森」中学部の立ち上げプロジェクトを中心に、今後ますます深刻化する不登校問題や、未来のビジョンなどについてじっくりとお話を聞きます。

minoo01.jpg藤田美保校長。2004年の学校設立時から
スタッフとして立ち上げに関わる。
自身が公立小学校で教えていたときの違和感から
「新しい学校を作りたい!」と志すように。

第1回「小学校はもっと多様になれる」はこちら
http://familyblog.shogakukan.co.jp/news/2014/09/000789.html

■保護者が主導した、中学部の立ち上げプロジェクト

――こどもの森の設立は2004年ですが、10年たった今、なぜ中学部をつくることになったのですか?

藤田「2013年の秋、当時高学年(5年生)に在籍していた児童の保護者の方から、『中学部をつくってほしい』という要望が出てきました。公立も私立もこれだ!と思える学校がなくって悩んでいる。こどもの森学園の方針や理念が子どもにとても合っているので、ぜひこの環境で中学卒業まで学ばせたい、ということでした」

――その望みを、学校がかなえたということでしょうか?

藤田「いいえ。そのお話を聞いたとき、私たちはこう言いました。『もし本気でお考えなら、つくってほしい、ではなく、お父さんもお母さんも一緒になってつくりませんか?』と。

学校をつくるというのは非常に労力のいるプロジェクトです。しかも、いったん進んだら、簡単にやめることはできません。ですから、保護者もスタッフも本気で覚悟を決めて取り組まなくてはとてもできないですよ、という率直な話し合いをしました」

――なるほど。まずは、保護者の側が"サービスを受ける"という受動的な感覚を捨て、"自分たちでつくる"という主体性を持つ必要があったのですね。

藤田「そんなやりとりがあって、翌年。2014年に入ってすぐに、2人のパパが『覚悟を決めました!』といって、リーダーに立候補してくださいました。こうして中学部開設準備委員会が立ち上がり、10名ほどの保護者の方が集まって、2015年4月の開設を目指してプロジェクトがスタートしました」

minoo2_01.jpgWEBサイトにも告知のバナーが貼られ、
いよいよ中学部の開設準備がはじまった。


■2016年までに2000万円の寄付を集めたい

――わずか1年での開設を目指したわけですね。公立では考えられない話ですし、学校法人でもなかなかありえない。NPO法人ならではのスピード感ですね。

藤田「もちろんNPO法人が学校を設立する場合でも、様々な問題はあるので、それらをクリアしながらの開設にはなります。でも、小学校の立ち上げで一度経験していましたから、超えられない壁ではないと思います。やはり一番ネックになっているのは、建設資金の問題です」

――あと半年後の開設に向けて、どれくらいのお金が必要になるのですか?

藤田「現在の校舎に1室、空き教室がありますので、来年4月の入学生は問題なく受け入れることができます。ですが、再来年の2016年に向け、現在の校舎の隣に小さな3階建ての校舎を新設して、小学部・中学部の校舎を分けたいと考えています。このための建設資金が2000万円ほどかかります。

私たちは非営利のNPO法人ですので、これらを寄付で集めねばなりません。目標は、2014年度中に1000万円、2015年度にもう1000万円ですが......。現在はそのうち220万円ほど集まったでしょうか」

――達成度22%ですか。

藤田「そうなんです。苦戦しています(苦笑)。

でも、この状況を保護者と共有することで、さらに多くの保護者の方が主体的に関わってくれるようになりました。親目線で学校の魅力を語って精力的に生徒募集をしてくれたり、チャリティ・イベントで少しでも収益を上げようとアイディアを出してくれたり、主体的に寄付を呼び掛けてくれたり...。

保護者のみなさんは日頃さまざまな業界で活躍していますから、一種の『プロボノ』(職業上持っている知識・スキルや経験を活かして社会貢献するボランティア)のような形で、おのおのが得意とするアプローチで学校に関わってくれています」

minoo2_02.jpgイベントの収益は学校にとって貴重な収入。
保護者も一緒になってチャリティ・イベントを盛り上げる。

――PTA組織などなくても、保護者と学校の連携がとてもうまくいっているのですね。

藤田「スタッフと保護者が集まって、ざっくばらんに語り合う『おとなの会』というのが月に1回あります。やはりなにごとも、自分がどうしたいか、という主体的な姿勢が重要なのだと思います。子どもも大人も同じですね」


■高校受験は目標を定めてから。他の中学校との交流も

――来年4月から開設される中学部は、どのようなプログラムで進むのですか?

藤田「新しくスタッフになる人がすでに決まっています。「学ぶと生きるをデザインする」ということを目指し、中学の学習指導要領もある程度カバーしつつも、学習指導要領外のカリキュラムも多くなる予定です」

――高校受験はどのようにサポートしていくのですか?

藤田「まず、行きたい高校を見つけるところからスタートします。その高校に行ったあと、どんな人生を切り開きたいか...というところまで思考を深めて、『目標地点』となる学校を最初に定めるんですね。一般の公立中学校のように、どの高校を受験しても大丈夫な学力をつける...という勉強の仕方ではなく、行きたい高校ができたら、その高校に行くためにはどうしたらいいのかを個別にサポートしていきます」

――小学部と中学部の違いはどんなところでしょう?

藤田「小学部は少人数制で一人ひとりにスタッフがじっくりと向き合いますが、中学生になると、より多くの人との交流も大切になってきます。ですので、教育理念が似ている国内外のオルタナティブ・スクールと交流イベントをやったり、合同で合宿をやったり、スカイプやEメールを活用して英語やその他の授業に取り組んでいきます」


■不登校児の支援だけでなく、学校の多様性を示す場所でありたい

――つい先日、安倍総理が東京のフリースクールを視察し、非正規の学校であっても運営費の補助などの公的支援を検討する、と発言しました。政府としても、子どもたちがいじめなどで学校に行けなくなっている状況からは目を背けられないという見解を明らかにしましたが、こどもの森では「不登校児」について、どのようなお考えを持っていますか?

藤田「フリースクールと聞くと、不登校児の支援、イコール居場所づくりであるというイメージが強くあると思います。この学校ももちろん、不登校だった子が学ぶ楽しさを知り、いきいきと通っているケースもありますが、こどもの森の生徒はそればかりでなく、小学1年生からここをあえて選んで入学してくれる子も多いんです」

――居場所としてだけではなく、多様な選択肢の一つとして存在する学校だ、と。

藤田「はい。高等教育だけでなく初等教育も、もっともっと多様であるべきで、それぞれの家庭が、学びたい・学ばせたいと思う学校を選んでもいいというのが、私たちの設立当初からの考えです」

――入学に際しては、子どもが「この学校に行きたい!」と面接で意思表示するほかに、両親がどちらとも学校の理念に賛同していないとダメなのだそうですね。

藤田「はい。こどもの森はこれまでの学校の在り方とは違いますから、この学校に入学させるのは、親の方にこそ勇気がいります。でも、家庭と学校の方針が一致すると、その子の6年間は本当にすばらしいものになります」


■学校は、「生きもの」。植え替えながら、どんどん伸びる

――この10年で、変わったものと変わらないものを教えてください。

藤田「まず変わらないのは、すべてを話し合いで決める、ということ。

全校集会でもスタッフ会議でも、私たちは多数決でものごとを決めません。いろいろな意見はあって当然。違う意見があれば、たった一人でも臆することなく発言するし、みんなもしっかりと耳を傾けます。そして、お互いに譲り合って、多様性を認め合いながら、時間はかかりますが納得できるところに着地します。新しい意見でも、少数派の意見でも、いいものはどんどん採用します。それが子どもたちの自己肯定感をはぐくむ学校づくりにつながります」

――逆に、変わってきたことはどんなことでしょうか?

藤田「私は、学校って『生きもの』みたいだな、と思うんです。

植物は、大きな鉢に植えかえると、根っこが育ってもっと大きくなるでしょう? 私たちの学校も、2004年の開校当初はふつうの一軒家を校舎として使っていましたが、その5年後に現在の校舎を建てました。物理的に『構え』が大きくなると、不思議なもので、中身も少しずつ変化していくんですよね。

それまでは、自分たちの理想とする教育を実践するところで完結していたのですが、校舎を建ててからは外部に発信することも増えましたし、他のNPOや地域と連携を取りながら運営していこうという姿勢へ変わってきました。

器が大きくなると、関わる人も増えてくる。今後、中学部がスタートして新しい校舎ができれば、またひとまわり大きな鉢になって、どんどん木が伸びて、やがて林になり...。まさに『こどもの森』が育っていくんだなあ、と思うんですよ」


どんな教育を与えるか――。子どもに学びの道筋をつけることは、親にとって重要な使命の一つといっていいでしょう。

小学校を大学受験の一ステップと考え、進学校へ小学校受験をさせる親。公立小学校に通わせながら、進学塾へ週5の送り迎えをこなす親。そして、これまでの学校の在り方とは180度違うオルタナティブ・スクールを選ぶ親。みんな、子どもにとって最良な環境を...と、真剣に向き合っている親たちの姿であり、正解も不正解もありません。

「学校は多様であっていい」。こどもの森から発信されるメッセージは、これからの教育に、これからの社会に、大切なヒントをもたらしてくれるのではないでしょうか。

(飯田陽子)

【取材協力】
箕面こどもの森学園
http://kodomono-mori.com/

※箕面こどもの森学園は、現在中学部の新校舎建設のため寄付を募っています。寄付はこちらから。3千円から受け付けしているそうです。
http://kodomono-mori.com/chugakubu/chugakubu.html#kifu

箕面こどもの森学園の教育内容や学校設立について、さらに詳しく知るならこちらもおすすめです。
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『こんな学校あったらいいな~小さな学校の大きな挑戦』(築地書館)
2013年10月発売/1,728円

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