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日本は「ESD」先進国。でも、ESDって何なんだろう?

2014年11月28日

2014年11月4日~12日の9日間、岡山・名古屋の2都市で、教育にまつわる世界レベルの会合が行われました。

それは『ESDに関するユネスコ世界会議』。

ユネスコ(国連教育科学文化機関)と日本政府の共催により、ESDの担い手やESDの今後をテーマにしたカンファレンス、提言、閣僚級会議などを展開。150の国や地域から1100人が参加する大規模な催しとなりました。

・・・さて、ところで、ESDって何のことかご存じでしょうか?

ESDとは、「Education for Sustainable Development」の略。日本語では「持続可能な開発のための教育」と訳されます。でも「持続可能」という概念はいまいち理解しづらく、正直ピンと来ない・・・という人も多いことでしょう。

「持続可能」という言葉は、現在、環境保全の分野でよく聞かれます。例えば「持続可能な開発」というと、未来の世代に不利益を出さない範囲内で環境開発を行っていくという意味になります。

そんな「持続可能」な社会をつくるためには、エネルギーなどの環境問題のほか、貧困問題や人権問題、紛争問題などを地球規模で解決していくことが求められます。

そしてESDとは、この「持続可能な社会」の創造を目指す「学習や活動」のことなのです。 "地球の未来を考えて、行動する担い手づくり"というと、イメージしやすいでしょうか。

■ESDを担う若きリーダーが集結!

今回は、『ESDに関するユネスコ世界会議』(以下、ESD世界大会)のユース・コンファレンス(若い世代の部)に、日本代表として参加された中尾有里さん(写真)へインタビューをさせていただきました。

世界や日本のESDが、いまどんな状況にあり、これから将来へ向けてどのように展開していくのかを、中尾さんの貴重な経験を通じて教えていただきます。

1128nakao.jpg中尾有里さん

――中尾さんは今回、大変な倍率の中で参加に至ったと聞きました。

中尾「はい。日本国内では約500人の応募があり、そのうちの3人に選出していただきました。世界的にみると、約5000人の若者から52人が選ばれて参加したことになります」

――どんな方々が参加していたのですか?

中尾「多くは社会起業家、研究者、大学教員、NGOや企業で環境教育やマイノリティの問題などに従事している職員などですね。ユースコンファレンスは18歳から35歳までの年齢制限がありますが、すでに自分のフィールドを持ち、社会や地球のために行動している人がほとんどでした。中には私のように、教育現場で子どもと直接関わっている立場の人もいました」

中尾さんは、以前こちらの記事でご紹介したオルタナティブ・スクール『箕面こどもの森学園』(以下、こどもの森)の常勤スタッフです。子どもたちの自主性を尊重する「こどもの森」では、時間割を子ども自身が組み立てて実践しています。指導する立場にある大人を「先生」と呼ばないのも「こどもの森」のスタイルで、中尾さんは"ゆりちぃ"のニックネームで、高学年の子どもたちの担任として活躍しています。

――ESDイコール学校教育というイメージがあったので、ESD世界大会の参加者が学校関係ばかりではなかったというのは、意外なお話です。

中尾「そうですね。日本では、ESDが学校の学習プログラムや体験プログラムの一つとして取り入れられていることが多いので、そういうイメージになるのだと思います。でも、ESDは学校での学びだけに限らない、地球規模での活動の実践なんですよね」

■世界は日本を「ESD先進国」として見ている!

ESDをプログラムに取り入れている学校の多くは、「ユネスコスクール」のネットワークに加盟しています。

ユネスコスクールとは、平和や環境保全といったユネスコ憲章の理念を実践している学校のこと。文部科学省はユネスコスクールをESDの推進拠点と位置づけ、加盟校増加に取り組んでいます。

2013年時点で、世界180カ国・約9,000 校がユネスコスクールとして認定。そのうち615校が、なんと、日本の学校です。幼稚園から大学まで、多くの学校がユネスコスクールとして認定され、世界中の学校と交流したり、地球規模の問題に立ち向かう教育が行われています。

――中尾さんのESD実践の場である「こどもの森」も、ユネスコスクールに登録申請をしているそうですね。

中尾「はい。地域や社会、地球を考えること(=持続可能性)は、こどもの森の教育の大切な柱の一つです。そして、こどもの森のような学校教育法に属さない非正規の学校だけでなく、公立の学校でもこのような取り組みが積極的に行われていることを、世界はとても高く評価しています」

1128nakao02.jpg「こどもの森」の授業風景。
学校全体で平和と憲法のことを知る一コマです。
人権・平和問題についても、対話を通じて真摯に考え、
自分がどう生きていくのかを考えます。

■「教える」ことでなく、「つなぐ」ことが、教員の仕事になっていく。

中尾「今回感じたのは、世界は日本のことを"ESD先進国"として見ているということです」

――そうなのですか! 日本人として誇らしい反面、世界の評価と現実のギャップを感じずにはいられませんが...。

中尾「そうですよね。実際は日本の教育には様々な課題があります。それは、まだまだ学習者中心の学びになっていないこと、全員が市民(=社会をつくっていくリーダー)として育つ学びに注力されていないことなどです。

昨今のESDを取り巻く現場でよく聞かれるのが、学校教育のシステムはすでに転換点に来ているという話です。持続可能な社会を創造していくためには、教育は、教員から一方的に与えるものでなく、子どもたちの関心から発現するものに変わらなくてはなりません。

だから、これからの教員はモノをたくさん知っていなくてもいいんです。よきファシリテーター(案内人・促進者)となって、子ども一人ひとりを、各自が求めるものにうまくつないでいく立場であるべきだ・・・という考え方が、ESDのスタンダードになってきています」

――これからは、地域ぐるみの学びや、企業・団体を巻き込んだ学びなど、学校の中だけで完結しない内容になっていくのでしょうか。

中尾「そうでしょうね。こうした取り組みを行っている学校は、いま、公立・私立に関わらずどんどん増えていて、文部科学省も支援しています。でも、残念なことに、その現状が社会に広く知られていないのが実情です。そもそも、日本にはユネスコスクールがたくさん存在していることも、あまり知られていませんものね。

その意味でも、私は、非常に強い責任を感じています。今回、世界の若者5000人の中から選ばれた52人の私たちが、これから次の世代をどうエンパワーメント(力づけ、鼓舞)していくか...。その責任が、前向きな気持ちではありますが、ずっしりと重いです」

――次世代のリーダーとして背負った使命は大きいですね。

中尾「ユースコンファレンスの52名の仲間は、さすがに世界の若手リーダーという感じで、とにかく主体性と創造性がすばらしかったです。

このメンバーが一堂に会することは、もう二度とない貴重なチャンスだと、みんなわかっていました。そこで、今後のESD推進のために、"会議で打ち出した『若者の提言』を広めるワークショップを開こう!" という声が上がったんです。急きょ企画を練り、ユネスコと交渉して会場を手配し、閣僚級への働きかけなども行って...。このワークショップは100人を超える参加者を集め、若者の可能性を示すことにもつながりました」

――では最後に、リーダーではない私たちが、日常でESDを意識したり、実践するために、大切なことは何でしょうか?

中尾「ESDでよく言われる言葉に『think globally, act locally』というものがあります。訳すなら、地球を想いながら、身の丈の活動を続けていく...という感じでしょうか。どんなに小さなことでも、どんなにローカルな舞台でもいいから、社会の課題を自分のこととしてとらえ、自分の人生のリーダーとして行動を続けることが大切だと思います」


社会のためにどう生きるかを、ごく自然に考えられる子どもを、育てるために――。教育現場も少しずつ変化が始まっています。私たち小学館ファミリーネットは、そんな "これからのきざし" を、今後も伝えていきたいと思います。

(飯田陽子)

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【取材協力】
箕面こどもの森学園
http://kodomono-mori.com/

※箕面こどもの森学園は、現在中学部の新校舎建設のため寄付を募っています。寄付はこちらから。3千円から受け付けしているそうです。
http://kodomono-mori.com/chugakubu/chugakubu.html#kifu

箕面こどもの森学園の教育内容や学校設立について、さらに詳しく知るならこちらもおすすめです。

kminoo04.jpg
『こんな学校あったらいいな~小さな学校の大きな挑戦』(築地書館)
2013年10月発売/1,728円

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